(1)関節痛発症時 (2)半年後 (3)2年後
この症例は、関節痛出現したが関節リウマチと診断されず2年経過した。関節破壊は徐々に進行した。(1)の時点では、骨びらんもなく関節裂隙の狭小化も認めなかったが、(2)では、第4,第5中手骨基部の骨吸収像を認め、2年後の(3)の画像では骨びらんと関節裂隙の狭小化が存在する。また、手根骨の配列も上下方向に潰された状態になった。
多関節炎を主病変とする慢性炎症性疾患であり、その特徴は、発症早期から関節破壊が進行し不可逆的な身体機能障害を生じる自己免疫性疾患である。関節リウマチ患者の主訴としては、関節が熱感をもって腫れ上がり疼痛のため自動他動運動が困難となり、また疼痛関節が移動・拡大していくと訴える場合が一般的である。
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受診方法 | かかりつけ医から地域医療連携室を通じて,ご予約ください。 |
(1)関節痛発症時 (2)半年後 (3)2年後
この症例は、関節痛出現したが関節リウマチと診断されず2年経過した。関節破壊は徐々に進行した。(1)の時点では、骨びらんもなく関節裂隙の狭小化も認めなかったが、(2)では、第4,第5中手骨基部の骨吸収像を認め、2年後の(3)の画像では骨びらんと関節裂隙の狭小化が存在する。また、手根骨の配列も上下方向に潰された状態になった。
RAの主な病態は、滑膜炎、血管新生、炎症性細胞の浸潤とそれらの相互反応による炎症性サイトカインや一酸化窒素(NO)の過剰な産生である。RA滑膜組織から大量に放出されるTNF、IL-1、IL-6等の炎症性サイトカインは、さまざまな細胞に働きCOX-2を誘導しアラキドン酸カスケードからPGE2を産生する。PGE2はVEGFを介した血管新生にもはたらき炎症を増幅する。PGE2は骨芽細胞に働きRANKL(受容体アクティベーター(NF-κ)リガンド)を誘導し、破骨細胞前駆細胞膜上のRANKと接触することにより破骨細胞へと分化・活性化させる(1) 。COX-2の発現は、滑膜細胞のアポトーシスを抑制し滑膜増殖を誘導し、このことが関節における滑膜炎を増悪させる(2)。また、TNF等のサイトカインは、マトリックスメタプロテアーゼ(MMP)-1,3,9、13を誘導する(3,4)。滑膜から関節内に放出されたMMPは、軟骨の主成分であるII型コラーゲンなどを切断し、軟骨組織を酵素分解する。それらは滑膜線維芽細胞やT細胞にRANKLの発現を誘導し、RANKの刺激を介して破骨細胞の成熟を促し、炎症性滑膜と骨が接する境界に多核破骨細胞が局在した結果、骨組織を吸収破壊する(5)。これが関節近傍の骨融解像(Erosion)としてX線検査により確認できる。 進行期RAの患者は、増殖した滑膜組織や骨・関節破壊の進行によって末梢神経・中枢神経の圧迫や絞扼を生じることがある。関節破壊の結果、手関節では手根管症候群、肘関節では肘部管症候群生じることは外来診療においてしばしば遭遇する。また、環軸椎の亜脱臼・軸椎下亜脱臼の結果、後索路障害などを呈する脊髄症となり歩行および坐位困難となる症例には年間数例ではあるが遭遇する。それは、軸椎垂直脱臼により延髄障害をきたす場合もある。それらの末梢もしくは中枢神経障害を生じた場合は結果的に手術療法を選択することとなる。
以上のことを踏まえるとRAにおける関節痛を考察すると、滑膜炎と骨・軟骨の構造的破壊に伴う侵害受容性疼痛が中心であると考えるのが妥当である。
最後に、関節リウマチ患者の疼痛に対するアプローチとしては、薬物療法・注射療法・手術療法それぞれの利点と欠点を考慮し最終的な方針を決定すべきと考える。
(1) Sano H.Hla T.Maier JA .el al: In vivo cyclooxynase expression in synovial tissue of patients whit rheumatoid arthritis and osteoarthritis and rat with adjuvant and streptococcal cell wall arthritis. J Clun Invest 89: 97-108,1992.
(2) 佐野 統 NSAIDsを使うタイミングと注意点
Modern Physician Vol.30 No.8 medical*Online:1034-1041, 2010-8 .
3) Scott DL,Wolfe F, Huizinga TW : Rheumatoid arthritis. Lancet 2010; 376:1094-1108.
4)Mclnnes IB,Schett G : The pathogenesis of rheumatoid arthritis. N Engl J Med 2011;365:2205-2219.
5) Yoshya Tanaka Difierntial diagnosis of rheumatoid arthritis in the context of arthralgia 日医雑誌 第141号・第8号 :1696-1700,2012-11
・DMARDs(disease modifying ant-rheumatic drug)
MTX(Methotrexate) anchor drug として世界標準
作用機序:1)葉酸代謝阻害
DNA合成阻害 DNSメチル化阻害
2)アデノシン代謝阻害
細胞内に多量のアデノシンを蓄積後に細胞外に放出
放出されたアデノシンの強力な抗酸化作用発現
投与量: 日本国内では、最大容量16㎎/週
禁忌: 重篤な腎不全 活動性結核 活動性B型肝炎
有害事象: 腎不全・肝障害・間質性肺炎・骨髄抑制
その他のDMARDs
SASP FK506 Buc MZB IGU etc.
※森 俊輔 メトトレキサートの体内動態と薬物相互作用 リウマチ科,42(5);471-479,2009
生物学的製剤
TNF-α阻害薬
Infliximab Etanercept Adalimumab Golimumab Certolizumab
IL-6 阻害薬
Tocilizumab
その他
Abatacept(T細胞の活性化における CD80/CD86:CD28同時刺激シグナルを選択的に調節)
Denosumab(Receptor Activator of Nuclear factor-kB Ligand;RANKLを阻害)